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溟犬一六のWEB小説

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巣好夫さん

怪談系ショートショート

読了目安:3分


 巣好夫(スコップ)さんってのが、私の故郷の青森で、小学校の時分に流行りました。
 当時は都市伝説ものが隆盛していましてね。口裂け女とかトイレの花子さんとか。だけどそういう奴らと違うところは、目撃者多数というところで、まあ私もその一人です。
 どんな奴かと言いますとね。大人の男が半ズボンを履いていて――半ズボンというか、まあ、黒い海水パンツのようなやつでね――それで左足が変わっていて、スコップなんですよ。左の膝から急に細い鉄の柄が生えていて、その先にはおむすび形のスコップが、地面に突き立つようになってるんです。それで巣好夫さん。
 巣好夫さんはね、怪我してるみたいに歩くんです。ひょこひょこっ、ひょこひょこって。左足のスコップは一瞬だけ地面につけて、右足メインで歩くんですよ。
 巣好夫さんの何が怖いってね、家にあがりこんで、夜更かししている子供を横倒しにして、首を自前のスコップで踏みつけるんですよ。たぬき寝入りしても駄目なんですよ。寝たフリをしていると、布団の上から何度も何度も踏みつけてくるんです。
 ちょっとグロいですよね。でも対処法があったので、みんな面白がっていました。巣好夫さんがすぐ近くまできたら飛び起きて、繰り返し叫んでやるんですよ。
『大好きだよ!』
 ってね。そうやって何度も叫ぶと、巣好夫さんは照れたように笑って消えてしまうんです。
 それでね、夜中に大声を出せば、当然両親がね、何事かと心配して飛んで来ますでしょう? そしたらほら、そこでまた巣好夫さんを思い出して、怖くなってしまうんですよ――あれ? 言ってませんでしたっけ。巣好夫さんって、自分の父親の顔をしてるんですよ。
 なつかしいなあ。もしもう一度巣好夫さんが出てきてくれたなら、殺されてもいいから、ありがとうとか、ごめんなさいとか、色々言いたいことがあるんですけどね。

 

 

(おわり)

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